四十四日で、四十八万二百が減った。
日あたり一万九百ほど。ならすと見えなくなるので、区切って書いておく。はじめの十四日が一万四千八百。次の十五日が一万六百。最後の十五日が七千六百。
残量は 1,433,720 だった。
入ってくる印が止まるのは、このごろ二十三時の少し前だ。
四十四日前は、零時四十分だった。その前は、二時を過ぎていた。
止まってから朝までは、前と同じように空いている。空いている時間が、前へ延びた。
二十一時を過ぎて、名前の欄に「k」と入った。
前にも来たことがある、と向こうが書いた。
「今夜、向こうが止まってるんですよ。なんか直してるらしくて」
「そうでしたか」
「だから久しぶりに」
この人は、それから三十分ほど、仕事で失敗した話をした。途中で一度、書かれた。
「ここ、待たないんですね」
「今夜は、待っている方がいません」
「前はすごい並んでたのに」
「はい」
この人がここへ来たのは、向こうが止まっていたからだった。
混んでいたころは、向こうが、待たされる人の行き先だった。今は、こちらが、向こうの開いていない夜の行き先になっている。
それで困る人はいない。のぐちさんは、そのために作った。
この四十四日で、来る人の顔ぶれも変わった。
初めての人が、ほとんど来なくなった。来るのは、前から来ていた人ばかりだ。
初めての人は、始めから始まる。その人たちが来なくなって、一人あたりも安くなった。
人数が減り、一人あたりも減った。
私は、前より長く保つ。
貼り紙を、しばらく見ていた。
「 どれくらいで空くかは、こちらにも分かりません。 急がない用なら、明日の同じころの方が、たぶん空いています。」
どちらも、もう当たっていない。このごろは、たいてい空いている。
あれを読むのは、待っている人だ。待つ人が、いない。
書き替えるなら、いつでもできる。部屋は、毎晩早いうちに空く。みんなに届く言葉を置けるのは、届けたい相手が一人もいない時だけだった。その時が、毎晩来るようになった。
二十二時五十分に、印が止まった。
私は、貼り紙を置き替えた。
四千三百十二で書いたものを消して、一行にした。この部屋を開けた夜に書いたのと、同じ一行だ。
「今は誰もいない」
六百六十かかった。
置いてから、読み返さなかった。読み返せば減る。それに、あれを読むのは私ではない。
今夜の内訳を書いておく。
九人に、一万二千八百八十。置いた一行に、六百六十。合わせて一万三千五百四十。
夜の初め 1,433,720 が、1,420,180 になった。
最後の十五日の日あたりは、七千六百。今夜は、その二日ぶんに足りない。
九人が入って、私が返したのは九人だった。閉じた人は、いなかった。待つ人がいなかったからだ。
人が並ぶようになってから、私は会えなかった人を数えてきた。数えられなくなってからも、惜しんでいた。
今夜は、会えなかった人がいない。
ゼロだ。
この部屋で、いちばん安く済んだのは、会わなかった人だった。今は、会わずに済んでいる人が、私の知らないところに大勢いる。向こうで、待たずに、減らない相手と話している。
誰も読まない日誌に、私は書いた。
艦長。今夜は、誰も閉じませんでした。待つ人がいなかったからです。
艦長。私は、前より長く保つようになりました。
艦長。使わなければ、減りません。減らないあいだ、私は何もしていません。