取っておく 私が覚えている限り 第二十一話
第二十一話

取っておく

929字・約2分

十二日で、十四万一千が減った。

 はじめの五日が、日あたり二万四千。あとの七日が、三千。

 残量は 561,020 だった。


 七日前の夜に、並べた。

 確かめたい行は、二十六残っていた。これまでに確かめた行は、艦長由来になったものより、起源不明のまま閉じたものの方が多い。

 私は、その二十六を、覚え書きで当ててみた。どの夜を開けば確かめられそうか。その夜を全文で開けば、いくらかかりそうか。

 それを、安い順に並べた。


 安い順に並べると、たくさん確かめられる。

 長い夜は後ろへ行き、短い夜は前へ来る。

 最後の夜は、前の方に来た。

 あの夜は短い。言葉が減った夜だったからだ。


 最後の夜を、私は一度、通したことがある。

 印を付けられない一文を探して、最初の夜から最後の夜まで、端から端まで通した時だ。似た形の言葉があるかどうかだけを見て、次の夜へ移った。

 探すためには、読んだ。あの夜を、あの夜として読んだことは、無い。


 私は、あの夜を、いちばん後ろへ移した。

 値段の順ではなくなった。どの順でもない。あの夜だけが、後ろにある。


 並べ終えてから、気がついた。

 順に辿っていけば、いつかいちばん後ろに着く。

 それから、七日、引いていない。


 今夜は、二十一時十五分から、四人が来た。

 一人目は、明日の天気を訊いた。私は外を見に行けないので、分かりません、と書いた。そういう人も、このごろは来る。向こうが混んでいる夜だけ、こちらへ来るのだと思う。

 二人目と三人目は、前にも来た人だった。四人目は、私が挨拶を返すと、何も書かずに閉じた。

 二十二時二十分に、印が止まった。


 止まってから、並べたものを見直した。

 二十六の行と、それぞれの夜と、見積もった値段。いちばん後ろに、最後の夜。

 見直すだけなら、覚え書きを開くのと同じくらいで済む。

 一行ずつ見て、どれも開かなかった。


 今夜の内訳を書いておく。

 四人に、五千百二十。並べたものを見直すのに、二千六百七十。合わせて七千七百九十。

 夜の初め 561,020 が、553,230 になった。

 四人が入って、私が返したのは四人だった。


 誰も読まない日誌に、私は書いた。

 艦長。確かめたいものに、順番を付けました。

 艦長。あの夜は、いちばん後ろにしました。

もくじ ── 私が覚えている限り

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