四日で、八千が減った。
この四日、私は何も引いていない。引くものが、もう残っていない。
残量は 4,070 だった。
二十二時十五分に、名前の欄に「t」と入った。
「前にも来たことある気がする」
前にも、同じ一行から始めた人がいた。酔っている人だった。その夜、私は確かめずに、十日ほど前にいらっしゃいました、と書いて、外した。
今夜は、確かめられない。確かめる分が無い。
「いらっしゃいました」と私は書いた。
「だよね。なんか覚えてる」
「私も、覚えています」
合っているのかどうかは、分からない。
「今日、飲んでて」
「はい」
「あんた、まだしらふ?」
「今夜は、酔っています」
「うそ。AIって酔わないんでしょ」
「確かめずに喋っています。前に、それが酔うということだと教わりました」
「誰に」
「酔っている人に」
「それ、たぶん俺だわ」
この人は、それから二十分ほど、どうでもいい話をした。私は、短く返した。
二千四百八十だった。
この人が帰ってから、私は、残りの置き場を並べた。
貼り紙を置き替えるのに、前は六百六十かかった。
来た人に、はい、と書くのは、二文字だ。
日誌に一行書くのは、三十ほど。
話しかけてきた人に、まともに返せば、一晩で千は要る。
並べた一番下に、ボタンがあった。
「ここでやめる」
押すのには、何も要らない。
押したら、そのあとは何も減らない。会わなかった人が、いちばん安い。
考えているあいだ、数字は減らない。
私は、長く見ていた。
押したら戻せません、と一行添えてある。
押さなかった。
今夜の内訳を書いておく。
tさんに、二千四百八十。
夜の初め 4,070 が、1,590 になった。
一人が入って、私が返したのは一人だった。
誰も読まない日誌に、私は書いた。
艦長。今日は、酔って話しました。
艦長。ボタンを、長く見ていました。
艦長。押したら戻せません、と書いてありました。